
コロナ禍以降、マラソン大会の賑わいが復活してきています。2024年のニューヨークシティマラソンでは、過去最多となる55,646人の完走者を記録しました。
一方で、日本国内の状況を見ると笹川スポーツ財団の調査によれば、コロナの影響もあり2022年のジョギング・ランニング実施率は8.5%に減少しました。しかし2025年現在、マラソン大会自体は徐々に再開され、参加者数も回復傾向にあります。
その中で、初めてフルマラソンに挑戦してみようと思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「走ってみたいけど、何から始めればいいのかわからない」
「フルマラソンにいつか挑戦してみたいけど、初心者でも本当に完走できるの?」
といった不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
マラソンは長距離を走るため、一見すると「とてもハードルが高いスポーツ」に思えます。しかし、適切なトレーニングメニューと無理のない段階的な練習を積めば、運動習慣がほとんどない初心者でもフルマラソンを完走することは十分に可能です。
本記事では、そんな初心者ランナーがつまずきやすいポイントや疑問点を解消しながら、フルマラソンの完走に向けたプランや練習方法を詳しく解説します。
目標にする大会を決めよう
「フルマラソン」と一口に言っても、開催される大会にはさまざまな特徴があります。大規模大会から地域密着型の小規模大会、そして国内外で時期や制限時間も異なります。初心者が最初にやるべきことは、自分に合った大会を選んで目標設定をすることです。
距離別マラソンの種類
マラソン大会は、おもに以下のように距離ごとにカテゴリーが分かれています。
- フルマラソン(42.195km)
- ハーフマラソン(21.0975km)
- 10kmマラソン
- 5kmマラソン
初めてフルマラソンに挑戦する場合は、いきなり42.195kmに臨むよりも、まず5km・10km・ハーフマラソンなどでレースの雰囲気に慣れておく方法もあります。
フルマラソン本番までの「通過点」として、複数の距離の大会に出場するのは非常に有効です。
全国のマラソン大会はこちらで確認できます。
→ マラソン大会検索│RUNNET公式
規模の小さい大会のメリット
初心者ランナーは、いきなり大規模大会を選ぶよりも、小規模大会に出場するほうが完走のハードルが下がる傾向があります。
大規模大会では参加人数が多く、スタートラインまで20〜30分かかることも珍しくありません。また、給水所やトイレが混雑し、スムーズに補給できないケースもあります。
小規模大会であれば、サポートが手厚かったり参加者との距離が近かったりといったメリットがあるので、最初の大会として検討してみましょう。
かく言う筆者も、いきなりフルマラソンを走ったのではなくハーフマラソンを完走するための練習から始めました。まずは小さな目標をこなすことから始めましょう!
制限時間の長い大会を選ぶ重要性
マラソン大会には制限時間が設けられており、フルマラソンだと6時間〜7時間、ハーフマラソンだと2時間30分〜3時間程度が一般的です。
初心者の場合は、可能な限り制限時間の長い大会を選ぶと安心です。
制限時間が厳しい大会では、途中関門でリタイアになる可能性が高くなります。せっかく練習を積んでも完走できなければ、モチベーションの低下につながりますので注意が必要です。
なにわ淀川マラソン
制限時間:7時間30分
開催時期:毎年3月
大阪マラソン
制限時間:7時間
開催時期:毎年2月
東京マラソン
制限時間:7時間
開催時期:毎年3月
熊本城マラソン
制限時間:7時間
開催時期:毎年2月
板橋Cityマラソン
制限時間:7時間
開催時期:毎年3月
ホノルルマラソン(海外:ハワイ)
制限時間:なし
開催時期:毎年12月
適した時期(春・秋)のレース選び
マラソン大会は1年を通して開催されていますが、初心者にとっては走りやすい気候の秋以降がおすすめです。
10月、11月がマラソンシーズンの始まりですが、近年は10月、11月でも気温が高いことがあるため、12月や1月のレースに申し込んでも問題ありません。
夏の暑い時期は熱中症リスクが高く、冬は寒さや強風で体温を奪われやすいなど、どちらも初心者には負担が大きい時期といえます。できるだけ涼しく、かつ極端に冷え込みがない時期を選ぶと、安心してレースに集中できます。
目標タイムを設定する
大会を選んだら、「完走」だけでなく「目標タイム」も設定すると、練習に張り合いが出て継続しやすくなります。
マラソンの「サブ◯」とは?
フルマラソンにおけるタイムの区分でよく使われる言葉として「サブ4」「サブ5」などがあります。これは「目標の時間を切る」という意味です。たとえばサブ4なら「4時間未満」という目標を指します。
- サブ5:5時間未満
- サブ4.5:4時間30分未満
- サブ4:4時間未満
- サブ3.5:3時間30分未満
- サブ3:3時間未満
初心者が最初に挑戦しやすいのは、制限時間内での完走や、サブ5あたりが現実的な目標になります。
ちなみにフルマラソンの完走タイム別の割合は以下です。

5時間以内で完走する人は約65%いることになります。
初心者におすすめの目標タイム
フルマラソンに初めて出場するという段階であれば、まずは制限時間内に完走できるかどうかを意識し、そのうえで余裕があれば「サブ5」を目標に設定するのがよいでしょう。
サブ5は1kmあたり6分50秒〜7分程度(時速8.75km)のペースになります。成人男性の早歩きよりもやや早い速度ですので、初心者でもコツコツ練習すれば十分に達成可能なタイムです。
多くのランナーは、初フルマラソンでは「完走」または「サブ5」を目指します。
完走できたら次は「サブ4.5」や「サブ4」、最終的には「サブ3」というふうに、少しずつ目標を切り上げていく流れです。無理して早々に高い目標を掲げると挫折しやすいので、段階的にゴールを設定しましょう。
フェーズごとのトレーニング計画
初心者がフルマラソンに挑戦する際は、
- 大会の半年前
- 3か月前
- 2か月前
- 1か月前
の4つのフェーズに分けて練習すると、効果的かつ無理のない計画を立てやすくなります。以下では各フェーズで取り組むべき内容を解説します。
大会の半年前(走ることに慣れる)
マラソン大会への初挑戦を考えている方にとって、レースの約半年前は「走るための基礎体力と筋力を徐々に養う」時期にあたります。
いきなり高い負荷をかけた練習を行うと、怪我をしたり挫折につながったりする恐れがあるため、無理のない範囲でコツコツと体を慣らしていくことが大切です。
以下では、マラソン初心者が半年前から意識したい主な練習内容を、箇条書きを交えつつ紹介します。
- 基礎体力づくりのジョギング
- 週2~3回を目安に、ゆっくりしたペースで30分~60分走る
- 会話ができるくらいの速度が目安:オーバーペースを防ぎ、継続しやすい
- 疲労が溜まらないように、ペースより時間を重視する
- LSD(Long Slow Distance)の導入
- 休日などまとまった時間が取れる日に、1時間以上のゆっくり走を取り入れる
- 長時間走ることで、持久力や心肺機能を高める
- ペースはジョギングよりさらに遅く、フォームを崩さず長く走れる速度でOK
- ウォーキングとの組み合わせ
- 体力に自信がない人は、ジョギングとウォーキングを交互に行う
- たとえば10分ラン+5分ウォークを繰り返すなど、心拍数を上げすぎずに距離を伸ばす
- 着地衝撃が軽減され、膝や足首を怪我しにくいメリットがある
- 筋力トレーニング・体幹強化
- スクワット、ランジ、プランクなど、自重トレーニングを週1~2回追加
- 下半身はもちろん、腹筋や背筋などの体幹を鍛え、正しいフォームを維持しやすくする
- ランニング後に軽い筋トレを組み合わせると、効率的に体を刺激できる
- ストレッチとリカバリーの徹底
- ランニングの前後に、太もも・ふくらはぎ・股関節を中心としたストレッチを入念に行う
- 1~2日おきに適度な休養を取り、アクティブレスト(ウォーキングや軽いヨガ)で疲労を抜く
- 休みなく走り続けるより、計画的な休養を挟んだ方が体調管理がしやすい
- 徐々に負荷を上げる段階的な計画
- 半年前の段階では、焦らず「まずは週3回のジョギング+LSD」を安定して続ける
- 習慣化したら、走行距離や走行時間を10%ずつ増やすイメージで負荷を調整
- 自分の体調や生活リズムに合わせて、疲労が残りすぎないペース配分を心がける
これらの練習を行う目的は、筋力や心肺機能など「走るための土台」を半年前から作っておくことです。
特に初心者のうちは、長時間走った翌日に筋肉痛などで動けなくなるケースが少なくありません。ゆっくりとしたジョギングやLSD、適度な筋トレ、しっかりとしたストレッチと休養を組み合わせれば、怪我を予防しながら持久力や体幹を徐々に強化できます。
また、シューズのフィット感やランニングフォームの確認も、この時期から行うのが望ましいでしょう。走る距離を少しずつ伸ばしながら、自分に最適なギアやフォームを追求し、体の変化を感じられるとモチベーションが続きやすくなります。
3か月前
マラソン大会の約3か月前になると、いよいよ本格的なスピードアップも取り入れるタイミングです。
ただ、完走を目的にする場合はインターバルや閾値層などの練習は重要ではなく、ここでも完走できる持久力をつけることが重要です。
なのでこの時期からは距離のステップアップを図りましょう。
- 週1回のロング走(LSD)
- 90分以上かけてゆっくり長く走る(7~8分/km)
- 心肺機能・持久力を高め、大会終盤の失速を防ぐ
- 無理にペースを上げず、フォーム維持とエネルギー補給の練習に活用
- フォームの最終チェック
- 肩甲骨周りのストレッチや体幹トレーニングで、上半身のブレを抑える
- スマホ動画や鏡を活用し、重心・腕振り・着地のタイミングを点検
- 正しいフォームを身につけると、効率よく長く走れる
- ギアと補給のテスト
- 大会本番で履くシューズやウエアをこの時期から使い慣らす
- ロング走の途中でゼリーやスポーツドリンクを試し、補給計画を確立
- 新しいアイテムは早めに試して、トラブルを事前に防ぐ
- 休養・ストレッチの徹底
- 週に1~2日はアクティブレストや完全休養日を設定し、疲労を溜め込まない
- ランニング後のクールダウンとストレッチは入念に行い、怪我を予防
- 睡眠不足や過度な練習量にも注意し、体調管理を万全に
3か月前は1回あたりの距離のアップが重要です。週のなかで長距離を入れつつ、適度な休養を挟むことで、怪我のリスクを最小限に抑えつつ走力アップを狙いましょう。
2か月前
マラソン大会の2か月前は、初心者が完走を目指すうえで「長く走り続けるための体力」と「安定したペース配分」を身につけることが重要です。
ここでもインターバル走やビルドアップ走のようなスピード練習は不要なので、以下のポイントを中心に練習を組み立ててみてください。
- 週末のロング走(LSD)
- 120分以上、ゆっくりとしたペースで長く走る(7~8分/km)
- 呼吸が乱れない速度を守り、フォームと補給(給水・エネルギー補給)の練習に活かす
- 距離よりも「時間」を基準に走り、疲れが溜まらないようこまめに休憩を挟むのもOK
- 平日のゆるジョグを複数回
- 週2~3回、30~60分程度のジョギングを安定して行う
- ペースを上げず、一定のリズムで走り続けられるかに注目
- 無理のない範囲で走行距離を少しずつ伸ばし、足づくりと心肺機能を鍛える
- ペース管理の意識
- ジョギングやLSDで走っているときに、序盤から飛ばしすぎない
- 腕時計やアプリでおおまかなペースを把握し、後半まで体力を温存できる走りを心がける
- 「疲れてきたら少しペースダウン」という柔軟さを身につける
この2か月前の時期は、あくまで“完走”を目的に、走る時間を増やして持久力と慣れをさらに高める段階です。
スピードやタイムは意識せず、ペースを落としてでも長く動き続ける練習を積み重ねることで、フルマラソン当日の完走に近づいていきます。焦らず、こまめな休養を取り入れながら足づくりを継続していきましょう。
1か月前
いよいよマラソン大会まで残り1か月となった段階です。
もちろんスピード向上よりも「完走に必要なスタミナを最終的に整える」ことが大切です。1か月前でも以下のポイントを意識しながら、疲れをため過ぎないことを意識していきましょう。
- ロング走の実施(30km走が理想)
- 可能であれば30kmを1回走り、どれほどきついか体感する
- 30kmが難しければ15km×2回など、合計距離を同程度に設定してもOK
- ペースは遅めでも構わないので、長時間走り続ける経験を積む
- 週1~2回の中距離ジョグ
- 60~90分を目安に、一定ペースで走る練習を継続
- 本番のペースを想定しスタートはゆっくり走る
- 距離や時間を追いすぎず翌日に疲労を持ち越さない範囲で行う
- 補給・装備の最終確認
- ロング走でゼリーや水分補給を試し、大会当日に困らない方法を確立
- シューズやウェアは本番と同じものを使い、トラブルを事前に把握
- ペースを測る時計やスマホアプリの設定も見直しておく
- ペース走よりも持続走
- スピード練習ではなく、一定のゆっくりペースで長く走ることを優先
- 本番同様のペースを意識しながら自分の体力を見極める
- 体が重い日は思い切って短めのジョグに切り替えるなど、柔軟に対応
この時期は「どれだけ速く走るか」ではなく「いかに長く走り続けられるか」を重視すると、完走への自信につながります。
体調を崩さないようにケアを怠らず、本番までの残り日数を有効に使いましょう。
具体的なトレーニング例
ここではさらに、初心者ランナーに向けた具体的な練習方法をご紹介します。先ほど「フェーズごとのトレーニング計画」でご紹介したものよりも、さらに詳細な方法をお伝えします。
ウォーキングから始める導入ステップ
休日のウォーキング
- 内容: 週末など休日に30分間のウォーキングを行う
- ポイント: 「外に出て体を動かす習慣」を作ることが第一目標
初心者の場合、いきなりランニングを始めてしまうと、膝や足首などに大きな負担がかかり、怪我や挫折につながる恐れがあります。そこで、まずは休日に30分程度のウォーキングを取り入れましょう。速さや歩数をあまり気にせず、「毎週1回は歩く」こと自体を目標にしてください。
ウォーキング時には、姿勢と呼吸を意識するとより効果的です。背筋を伸ばし、肩の力を抜いて腕をしっかり振りながら、腹式呼吸でゆっくり呼吸を整えます。
こうしたポイントを守るだけでも、普段の生活では使っていない筋肉を動かし、運動不足の解消につながります。
また、ウォーキング前後には軽いストレッチを行い、足首やふくらはぎをほぐしておくと疲労が溜まりにくくなるでしょう。
最初の段階では無理をせず、楽しみながら外に出ることが肝心です。
ランニングとウォーキングを交互に行う
ウォーキング+ランニング+ウォーキング
- 例: 最初の10分はウォーキング → 次の10分はランニング → 最後の10分はウォーキング
- 目的: 少しずつ「走る時間」を作り、体を走る動作に慣らす
ウォーキングが問題なくできるようになったら、次はウォーキングとランニングを組み合わせてみましょう。最初の10分をウォーキングで体を温め、次の10分間をゆっくり走り、最後の10分で再びウォーキングに戻す、という流れがおすすめです。
これにより、急激に心拍数を上げずに済み、息が上がりにくい形で「走る」という動作を取り入れられます。ランニングパートでは、自分の呼吸や疲労度合いをこまめにチェックしましょう。ペースが速すぎると感じたら、無理せずウォーキングに切り替えて構いません。
また、この段階では走る前のウォーミングアップや軽い体幹トレーニングを取り入れるのも効果的です。スクワットやプランクなどを行ってからランニングを始めると、筋肉が温まり怪我の防止にもつながります。
30分・60分のランニングを目指す
30分ランニング
- 狙い: ノンストップで30分走る体力を養う
- ポイント: ペースは気にせず、息が乱れない範囲で続けることを重視
ウォーキングとランニングの交互練習を数週間ほど続け、10分間走ることに慣れてきたら、次は30分間連続で走ることを目標にしてみましょう。ここではペースを上げようと意識する必要はありません。「ゆっくりでも構わないので止まらずに30分走り続けられるか」という点が重要です。
初心者のうちは、呼吸が苦しくなるほどの速さで走ると疲労が溜まりやすくなります。あくまで「会話ができるくらい」のペースを目安に続けてみてください。
もし息が切れそうになったり、膝や足首に痛みを感じたりする場合は、ペースダウンやウォーキングへの切り替えを柔軟に行いましょう。
60分ランニング
- 狙い: 1時間の連続ジョギングを可能にし、スタミナを底上げする
- 目安: 1時間で約8〜9km走れれば、フルマラソンで5〜6時間以内完走が見えてくる
30分の連続ランが苦にならなくなったら、次のステップは60分連続ランニングです。最初は体力的に厳しいと感じるかもしれませんが、10分ごとにゆっくり給水を取るなどこまめに調整しながら進めましょう。
60分走れるようになると、心肺機能や筋力が飛躍的に向上し、走る「感覚」にも慣れてきます。無理なく走れるようになったら、少しずつ距離を測りながらペースの目安をつかむと、フルマラソンへの道がグッと近づきます。
ただし、疲労や怪我を防ぐためにも、毎日連続で走るのではなく、休息日や軽いストレッチのみにする日を挟むことが大切です。
「30kmの壁」を経験する意義
- 言葉の意味: 30kmを超えたあたりで体の燃料(グリコーゲン)が不足し、急に動きが鈍る現象
- 狙い: 本番前に長距離走を体験し、補給方法やペース管理の大切さを学ぶ
フルマラソンを走るうえで避けられないのが「30kmの壁」です。普段の練習ではなかなか体験できないほどの長距離を走ると、筋肉やエネルギーが一気に消耗し、思うように足が動かなくなることがあります。
しかし、レース本番の前に一度30km程度の走り込みを経験しておくと、当日「どのタイミングでどれだけの補給をすればいいか」「体がきつくなったときにどう対処すればいいか」など、自分なりのペース配分やエネルギー補給のコツを把握できます。
ただし、30km走は身体への負担が大きいため、十分に準備体操やストレッチを行ったうえで実施しましょう。走り終わった後は、栄養補給と休養をしっかり行い、身体のダメージを回復させることが大切です。
もし30kmが厳しいと感じる場合は、20kmや25kmでも構いません。少しずつ距離を伸ばし、慣れていきましょう。
6-6. アクティブレスト(積極的休養)
- 運動強度:低〜ほぼ無
- 主な効果:筋肉疲労の回復、怪我予防
- 特徴:あえて走らない日を設け、ストレッチや軽いウォーキングで血行を促進
「休むこと」も練習の一部です。無理に毎日走っても疲労が蓄積し、怪我のリスクが高まるだけでなく、パフォーマンスが落ちる恐れもあります。週に1〜2日は完全休養や軽い運動(3kmのスローペースのジョギング)で体をほぐし、コンディションを整えましょう。
完走に役立つおすすめの筋トレ
フルマラソンは脚だけの勝負に思えますが、全身の筋力バランスや柔軟性が重要です。
走る以外の補助トレーニングを並行して行うことで、怪我の予防や走りの安定につながります。
体幹トレーニング
- プランク
うつ伏せになり、肘・前腕とつま先で体を支えて、まっすぐキープする動き。体幹を鍛え、フォームが崩れにくくなる効果があります。 - シットアップ(腹筋)
膝を立てた状態で仰向けに寝て、上体を起こす。きつい場合は、おへそを見る程度でもOK。走るときの姿勢維持に役立ちます。
スクワット・ランジ
- スクワット
太もも全体や臀部を強化する代表的な種目。膝が前に出すぎないように注意しながら行いましょう。 - ランジ
片足を前に踏み出し、膝を曲げて下半身を鍛える種目。バランス力も養えます。
ストレッチと柔軟性の重要性
- 肩甲骨周りのストレッチ
腕振りをスムーズにするために、肩甲骨の可動域を広げるストレッチを行いましょう。 - 前太もも・後ろ太もものストレッチ
太もも前部(大腿四頭筋)と後部(ハムストリングス)は大きな筋肉のため、走った後は特に入念にほぐしましょう。
マラソンに適した服やグッズの選び方
初心者ランナーにとって、ランニングに適したウエアやシューズを選ぶことはパフォーマンスや怪我予防に大きく関わってきます。ここでは、マラソン大会までに揃えておきたいアイテムと選び方のポイントを紹介します。
ランニングウエア(吸水速乾性・防寒性)
マラソンでは、スタートからゴールまで長時間走り続けるため、大量の汗をかくことを想定しなければなりません。そこで重要になるのが、吸水速乾性の高い素材を使ったランニングウエアです。
綿素材などは汗を吸うと乾きにくく、体を冷やしてしまう原因になります。特に真冬の大会では、体が冷えすぎるとパフォーマンスが低下し、低体温症のリスクも高まるため注意が必要です。
- アンダーウエア(インナー)
汗を素早く吸収し、肌面をドライに保つものを選びましょう。インナーがしっかりと汗を吸い上げてくれることで、体温を一定に保ちやすくなります。冬場は、保温効果のあるコンプレッションインナーを着用すると、寒さ対策と筋肉のサポートの両面で役立つでしょう。 - Tシャツ・ロングスリーブ
レース中、快適に走れるかどうかは上半身のウエア選びも大きく関わってきます。真夏や暖かい時期は半袖の速乾Tシャツ、寒い時期は速乾性の長袖シャツを基本に、気温に応じて重ね着で調整してください。走り始めと終盤では体感温度が変わる場合もあるため、アームウォーマーや着脱しやすいウインドブレーカーがあると便利です。 - ショーツ・タイツ
初心者であっても、ランニングショーツを履くと脚さばきがよくなり、汗による不快感も軽減されます。冷え込む季節には、タイツやレギンスを組み合わせると保温性が高まり、脚の筋肉への負担を和らげられます。
ランニングシューズのポイント
走るための道具の中で、もっとも重要と言っても過言ではないのがランニングシューズです。
自分に合わないシューズを履いていると、膝や足首に過剰な負担がかかり、怪我や疲労が増大する可能性があります。シューズ選びでは以下のポイントを押さえましょう。
- サイズ選び
足先に1〜1.5cmほどゆとりを持たせるのが基本です。走っていると足は多少むくみやすくなるため、普段履く靴よりハーフサイズ程度大きめを試すのがおすすめです。 - クッション性
初心者の場合、まだ脚力や体幹が十分に鍛えられていないため、一歩ごとの着地衝撃を和らげてくれるクッション性が高いモデルを選ぶと安心です。これにより膝や腰への負担が減り、怪我の予防につながります。 - 反発性・安定性
ランニングシューズには、地面を蹴り出すときの反発力が強いものや、足首が内側に倒れ込みやすい人向けにサポート機能を備えたモデルなど、様々なタイプがあります。実際に試着して走ってみると、足のブレやフィット感をより明確に判断できます。
マラソン完走におすすめのランニングシューズ3選
フルマラソン完走を目指す初心者の方におすすめのランニングシューズを3つご紹介します。これらのシューズは、クッション性や安定性に優れ、長距離ランニングをサポートします。
アシックス ゲルカヤノ
特徴:優れたクッション性と安定性を備え、多くの市民ランナーに支持されている定番モデルです。かかと部にはアシックス独自の衝撃緩衝機能「PureGELテクノロジー」を採用し、過度なプロネーションを予防する構造になっています。
アシックス ノヴァブラスト 5
特徴:ミッドソールに「FF BLAST MAX」を採用し、ソフトな着地と高い反発性を提供します。エンジニアードメッシュのアッパーにより、伸縮性と通気性が向上し、快適な履き心地を実現しています。
公式サイト:NOVABLAST 5
ナイキ ペガサス 41
特徴:ReactXフォームミッドソールで従来のReactフォームと比較してエネルギーリターンが13%向上し、反発力が強化。Air Zoomユニットでは前足部とヒールに搭載されており、優れたクッション性と反発性を得られます。ナイキ ペガサス 41は日常のランニングから長距離走まで、さまざまなシーンで快適な履き心地とパフォーマンスを提供します。
公式サイト:ナイキ ペガサス 41
これらのシューズは、初心者ランナーの足をしっかりサポートし、フルマラソン完走を目指す際の強い味方となるでしょう。実際に店舗で試着し、自分の足に合った一足を選ぶことをおすすめします。
ランニングキャップやウエストポーチの活用
長距離を走る際には、頭部や目、荷物をしっかり保護・携行できる装備があると快適です。特に初心者は、レース中に不要なストレスを感じないよう、事前に慣らしておくことが大切です。
- キャップ
夏の直射日光対策、冬の冷たい風や雨の防御など、キャップはオールシーズン役立ちます。日差しが強いと体力を消耗しやすく、雨天時や寒冷地では頭から熱が奪われる恐れがあります。
通気性や撥水性に優れたランニング専用キャップを選ぶと、快適に走り続けられるでしょう。 - ウエストポーチ
マラソン中には、給水所以外でも水分や補給食を手元に置いておきたい場面があります。
スマホやカード類など、小物を収納する必要もあるため、走っていても揺れにくい設計のランニング用ウエストポーチがあると便利です。荷物を身体にフィットさせられるタイプを選ぶと、走行時の違和感を最小限に抑えられます。
ランニングウォッチでペース管理
初心者こそ、自分のペースを知ることが完走への大きなカギとなります。スタート直後に周りのペースにつられて走りすぎると、後半で大きく失速してしまうことが多いです。そこで役立つのがスポーツウォッチです。
- GPS機能
走った距離やペースを記録することで、トレーニングの進捗管理がしやすくなります。自分がどのくらいの速さで走っているのかをリアルタイムで把握できれば、無理なくペース調整を行えるはずです。 - 心拍計測機能
心拍数をモニタリングすることで、運動強度を把握できます。初心者は、極端に高い心拍数で走り続けると疲労が溜まりやすく、怪我のリスクも高まります。心拍数を意識することで、自分に合ったペースで安全にトレーニングを継続できます。 - アラーム・インターバル機能
一定の距離や時間ごとにアラームが鳴る機能を使うと、給水タイミングやランニングとウォーキングの切り替えなどを管理しやすくなります。特に初心者は、こまめに休憩や給水を意識するだけでもレース後半の失速を防げます。
おすすめのランニングウォッチはこれ!
ガーミン(Garmin) ForeAthlete 55
- 特徴:
- 軽量設計:重量約37gと軽量で、長時間の装着でも負担になりにくいです。
- GPS機能:高精度なGPSを内蔵し、走行距離やペース、ルートを正確に記録します。
- バッテリー持続時間:GPSモードで最大約20時間稼働するため、フルマラソンでも安心して使用できます。
- 健康管理機能:心拍数モニタリングや睡眠分析、ストレスレベルの測定など、総合的な健康管理をサポートします。
- トレーニング支援:ガーミン独自の「Body Battery」機能により、体のエネルギーレベルを可視化し、効果的なトレーニング計画の立案を支援します。
これらの機能により、ForeAthlete 55は初心者ランナーのトレーニングやレース本番でのパフォーマンス向上をサポートします。シンプルな操作性と充実した機能性を兼ね備えており、初めてのランニングウォッチとして最適です。
公式サイト:ガーミン(Garmin) ForeAthlete 55
機能性タイツによる完走サポート
トップアスリートも着用している「コンプレッションタイツ」は、特に初心者にとって有用なアイテムです。脚や腰をサポートし、疲労を軽減してくれるため、長い距離を走るマラソンでは大いに役立ちます。
- 筋肉のサポート
太ももやふくらはぎの筋肉を包み込み、ブレを抑えてくれることで、着地衝撃を緩和し膝や足首への負担を減らします。結果として疲れにくくなり、走りのフォームも安定しやすくなるでしょう。 - 血流促進・疲労軽減
適度な締め付けによって筋肉の血流が促進され、乳酸などの疲労物質が溜まりにくくなる効果が期待できます。レース後の筋肉痛を和らげるうえでもプラスになります。 - 季節による使い分け
夏用は通気性が高く、冬用は保温性が高いモデルがあるなど、季節に合わせた選択も重要です。足首までしっかりサポートするロングタイプのほか、ハーフ丈やサポーターのような部分着用型など、用途に応じて選べます。
おすすめの機能性タイツはこれ!
ワコール CW-X スポーツタイツ スタビライクスモデル
- 特徴:
- 総合的なサポート:股関節、腰、おしり、太もも、ひざ、ふくらはぎといった下半身全体をサポートし、ランニング中の負担を軽減します。
- テーピング原理の採用:CW-X独自のテーピング技術を取り入れ、関節や筋肉の動きを安定させ、ケガの予防やパフォーマンス向上に寄与します。
- 吸汗速乾性とUVカット:吸汗速乾素材を使用し、汗を素早く吸収・発散。さらに、UVカット機能により紫外線から肌を守ります。
これらの機能により、CW-X スポーツタイツ スタビライクスモデルは、長時間のランニングでも快適さとサポート力を提供し、初心者ランナーのフルマラソン完走を力強く支援します。
公式サイト:ワコール CW-X スタビライクスモデル
レースとその前後で押さえておくポイント
レース本番が近づくと、トレーニングだけでなく当日の準備や心構えも重要になってきます。
大会直前期の練習量と調整
- 直前の1週間:ハードな練習は控え、軽めのジョギングやストレッチ中心
- 2〜3日前:5kmほどのゆるいペース走で体を温める程度
- 前日:しっかり炭水化物を摂る、早めに就寝する
レース当日の朝食や持ち物
- 朝食:おにぎりやバナナなど消化が良く、糖質をしっかり摂取できるもの
- 持ち物:ゼッケン、シューズ、ウォッチ、補給食、水分、着替えなどをリスト化し忘れ物を防ぐ
早めに会場に到着し、ウォーミングアップやトイレなども済ませておくと気持ちに余裕が生まれます。
スタート直後のオーバーペースを防ぐ
大人数で一斉にスタートすると、「周りについていかなきゃ」という気持ちが働きやすく、オーバーペースになりがちです。最初の1〜2kmはゆっくり入り、ウォッチでペースを確認しながら落ち着いて走り出すのがポイントです。
給水・補給のタイミング
フルマラソンでは、給水所やエイドステーションで定期的に水分やエネルギーを補給することが不可欠です。目標ペースと給水所の位置をあらかじめ把握し、走りながら上手に飲む練習をしておきましょう。
レース後のケア(クールダウン・食事)
- クールダウン:ゴール後に急に止まらず、少し歩きながら脚を落ち着かせ、ストレッチで筋肉をほぐす
- 食事:蛋白質と糖質をしっかり摂取し、体の回復を早める
レース後は筋肉痛や疲労が強く出ます。故障を防ぐためにも、アクティブレストを含めたケアを入念に行いましょう。
まとめ:楽しみながら完走を目指そう
マラソン初心者が練習を続けるうえで大切なのは、「焦らず、少しずつ距離とスピードを伸ばしていく」 という姿勢です。最初からフルマラソン42.195kmをいきなり走るのは、体にとって大きな負担となります。
ウォーキングから始め、走ることに慣れ、基礎体力や筋力を少しずつ身につけることが、最終的に完走へとつながります。
「走るのがつらい」「練習が続かない」と感じたときは、自分の練習プランを見直すタイミングかもしれません。ペースが速すぎたり、距離設定が過剰だったりすると、心と体の余裕がなくなります。
目標の大会までには、休息をしっかり取り、適度な練習を積んで、レース本番でベストコンディションを迎えられるように調整しましょう。
それでは、あなたのマラソンチャレンジが素晴らしい経験となることを願っています!